
ペルシャ絨毯の制作工程後半|手削り・洗い・最終仕上げの職人技(後半)
ペルシャ絨毯が完成するまで――後半の“魔法”を解き明かす
ペルシャ絨毯と聞けば、誰もが一度はその美しさと優雅な手触りに魅了された経験があるはず。実は、その華やかさの陰には、驚くほど手間のかかる後半工程が隠されています。前半は「織り」「染色」「パイル結び」などが有名ですが、今回は、その仕上げ段階でどんな“魔法”がかけられているのか、覗いてみましょう。
手削り(シャーリング)――模様を“際立たせる”プロの技
アイロン+固定で形を整える
織りあがったばかりの絨毯は、一度乾燥させた後、裏からアイロンをかけて形を整えます。ただ敷くだけではなく、裏返しにして釘で板の間に固定しながら引っ張るのがミソ。すると、絨毯特有の歪みが矯正され、端正な形に仕上がっていくんです。
扇形のナイフで“シャーリング”
その後登場するのが「シャーリング」。扇形のナイフを使って、パイル(表面の毛足)をまるで床屋さんのバリカンのように削りそろえます。
- パイルの高さが均一になると、模様がくっきり現れてグッと際立つ。
- ほんの数ミリの差でデザインの印象が変わるからこそ、熟練職人の繊細な感覚が求められる。
この一手間があるからこそ、ペルシャ絨毯は見る角度によって色の移ろいや陰影が生まれ、思わず見とれてしまうほどの美しさを纏うのです。
洗い――埃も染料も残さず“丸洗い”でスッキリ
シャーリングの後は、豪快に絨毯を丸洗いします。「え、そんなに濡らして大丈夫?」と心配になるかもしれませんが、そこは百戦錬磨の職人におまかせ。水をかけて石鹸を塗布
- 何度もブラシをかけて、織りの間に潜む埃や削りくず、余分な染料を徹底的に取り除く。
鉄の鍬状の道具で水分を押し出す
- 洗濯機のように回して脱水はできないので、鍬(くわ)に似た道具を使って少しずつ水を押し出す。
- 揉んだり絞ったりしないから、パイルを傷める心配が少ない。
乾燥は天日に頼り切り
- クムの地域では、適度な塩分を含む水と乾燥した気候が絨毯をより柔らかく仕上げるといわれる。
- 湿度が10%以下になる夏は特に乾燥も早く、一石二鳥。
この洗いのおかげで絨毯はさらにふっくら柔らかくなり、織り目も整然。まるでスパ後の肌のように気持ちよく仕上がるわけです。
再手削り――しつこいくらいの“微調整”が命
洗い終わって乾燥させた後、もう一度シャーリング(手削り)を行います。
- 最初のシャーリングで大まかなパイルの高さを整えた後、
- 再シャーリングで最終的な微調整を入れて、より完璧に仕上げる。
ここでのさじ加減は職人の“勘”によるところが大きい。数ミリのズレが模様をぼかす原因になるため、再手削りは文字通り「最終のこだわり」の塊なんです。
最終仕上げ――フリンジやエッジ部分まで抜かりなし
最後は絨毯の“裾”にあたる部分、つまりフリンジ(房)やエッジの処理です。
- フリンジ: 絨毯の縦糸をほどけないように結び、見た目にも可愛らしい房状にする。
- エッジの補強: 縦糸に沿って糸を巻きつけ、しっかりと固めて形を保つ。
この工程を丁寧に行うことで、何十年もの使用に耐えうる頑丈さが手に入るわけです。だいたいこうした工芸品は「細部の作り込みが命」と言われますが、ペルシャ絨毯も例外ではありません。
まとめ:完成した絨毯が放つ“オーラ”は後半工程の賜物
織り始めからパイル結びまでの前半ステージだけでも相当な手間ですが、後半の手削り・洗い・再削り・最終仕上げによってこそ、ペルシャ絨毯は真の輝きを放つようになります。一連の工程を経た絨毯はまさに“一点ものの芸術品”として、世界中のファンを虜にしてやまないのです。
- 手削りで模様を際立たせ
- 洗いでスッキリ清潔に柔らかく
- 再手削りで完璧な表情に仕上げ
- 最後は房とエッジで耐久性と美観を引き出す
こうした幾重もの作業が織り合わさって生まれるのが、ペルシャ絨毯の独特の存在感。「一枚敷くだけで部屋の雰囲気がガラリと変わる」と言われるのも頷けますよね。
あなたがもし、ペルシャ絨毯を選ぶ場面に遭遇したら、ぜひ裏話や仕上げ工程にも思いを馳せてみてください。きっと、職人たちが込めた情熱や技術を感じ取り、一段と愛着が湧くことでしょう。
さあ、そんな魔法のカーペットを、あなたの暮らしに迎え入れてみませんか? その瞬間から、足元がちょっぴり幸せになること請け合いです。
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