ペルシャ絨毯のノット数について

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    「細かいほど良い」って聞くけど…一体何がどう違うの?

    ペルシャ絨毯では必ずと言っていいほど出てくるのが「ノット数」という言葉。

    でも、

    「ノットって、そもそも何?」

    「なんで結び目がたくさんあると良いの?」

    「数字が違うと、具体的に何が変わるの?」…

    そんなペルシャ絨毯の品質を語る上で欠かせない「ノット数」について、その基本から、ちょっとマニアックな話まで、掘り下げてみたいと思います。

    そもそも「ノット」って何? なぜわざわざ「結んで」いるの?

    まず、基本中の基本。「ノット」とは、英語で「結び目」のこと。ペルシャ絨毯は、縦糸に、色とりどりの糸(パイル糸)を一本一本、手で結びつけて作られています。その結び目の数を、絨毯の面積あたりで数えたのが「ノット数」なんですね。

    ペルシャ絨毯の「ノット」

    「え? わざわざ結ぶの? 普通に織り込むんじゃダメなの?」 そう思われるかもしれません。でも、この「一本一本、独立させて結びつける」という、気の遠くなるような手間暇こそが、ペルシャ絨毯ならではの素晴らしい特徴を生み出す秘密なんです!

    そもそも「ノット」って何? なぜわざわざ「結んで」いるの?

    理由その1:あの「ふかふか」の秘密! 気持ちいい踏み心地 糸を結びつけて、その先をカットすることで、絨毯の表面にたくさんの毛足(パイル)が上向きに立ちます。一本一本が独立しているので、根元がしっかり支えられ、弾力のある、ふかふかとした踏み心地が生まれるのです。歩くたびに足元で感じる、あの独特の心地よさは、この結び目構造のおかげなんですね。

    理由その2:驚くほどの「丈夫さ」! 長く使える理由 一本一本が縦糸にしっかり結びつけられているので、非常に丈夫です。たとえ表面の毛足が擦り切れてきても、結び目がほどけない限り、糸が抜け落ちてしまうことはありません。隣の結び目に影響しにくいので、部分的に傷んでも、そこから一気にダメになってしまう…ということが少ないのです。だから、ペルシャ絨毯は何十年、時には百年以上も使い続けることができるんですね。

    この「結ぶ」という、時間のかかる作業こそが、ペルシャ絨毯の心地よさと耐久性の、まさに土台となっているわけです。

    ペルシャ絨毯ノット数の意味

    ペルシャ絨毯には様々な産地がありますが、特に有名なのが、美しいシルク絨毯で知られる「クム」です。このクム産のシルクペルシャ絨毯には、実はノット数に関して、ある程度の「目安」というか「基準」のようなものがあるんです。

    それは、「1cmあたり、だいたい10個~11個の結び目があること」

    これは、クムで使われる高品質なシルク糸の太さや、代々受け継がれてきた織りの技術水準からくる、いわば「クム産シルクペルシャ絨毯のスタンダード」のようなもの。この範囲のノット数だからこそ、クム特有の緻密で美しいデザインと、シルクならではの輝き、そして十分な耐久性をバランス良く実現できるんですね。使われる糸や材料も、この規格に合わせて準備されることが多いようです。

    じゃあ、この範囲から外れると…?

    • 1cmあたり10ノット未満の場合: もしかしたら、それはクム産ではなく、他の産地のものかもしれません。あるいは、残念ながら、近年増えている中国などで作られた、品質の異なる絨毯の可能性も考えられます。(もちろん、産地や品質が違っても、素晴らしい絨毯はたくさんありますよ!)
    • 1cmあたり12ノット~14ノット: このクラスの密度になると、(クム産の中でも)ジャムシディ工房のような、ごく一握りの工房でしか織られていません。その数は極めて少なく、非常に希少です。 単純計算ですが、1cmあたり10ノット(1平米あたり100万ノット)と14ノット(1平米あたり約196万ノット)とでは、結び目の総数は約2倍にもなります。密度が上がるほど極めて織るのが難しくなり、製作にかかる時間も数倍を要します。
      ジャムシディ工房の超高密度な作品例
    • 1cmあたり14ノットを「超える」場合:

      ここは注意が必要です。手織りで1cmあたり14ノットを超えるような、人間業とは思えないほど超高密度の絨毯も、ごくごく稀にですが存在します。 それはもう、大変な技術と時間を要する、特別な逸品です。

      一方で、市場には「機械織り」の絨毯も出回っています。機械織りは、そもそも「結び目」を作るのではなく、別の方法でパイルを植え付けていくため、裏面に手織りのような結び目が見えません。

      とくに近年は、オークションサイトなどで、以下のようなタイトルを用いて機械織りを(手織りの逸品であるかのように)出品している、出品者の詳細が不明な個人のケースが増えています。

      • (例)「最高級 ペルシャ絨毯 イラン クム産 シルク100% 約225万ノット 高密度」

      • (例)「最高級希少作 ペルシャ絨毯 イラン クム産 シルク100% 手編み 289万ノット特大判」

      これらは機械織りです。

      それが本当に手で結ばれているのか、それとも全く別の製法のものなのかは、裏面を見たり、信頼できる情報でしっかり確認する必要がありますね。細かければ何でも良い、というわけではないのです。

      もし(手織りと偽った機械織りを)買わされてしまった場合は、詐欺の可能性もあるため、警察に被害届を出すことも検討してください。

       

    機械織り絨毯の例

    ノットの測定基準について

    ノット数は手織りである特性上、測る位置によって多少の誤差が出ます。また、専門店や工房によっても測定基準が異なる場合があり、あくまでも「目安」となります。

    ちなみに当店(ゴレスタン)では、すべての作品のノット数を定規を当てた写真で公開しており、ご自身で確認できるようにしています。逆に言えば、こうした定規ありの写真を公開しない販売店には注意が必要かもしれません。

    品質は「裏」を見ればわかる! まるでレンガ造り?

    良い絨毯かどうか、どこを見れば一番わかるの?

    なぜなら、絨毯の裏面には、その品質や、作り手の技術レベル、仕事の丁寧さが、ごまかしようなく、そのまま表れるからです。

    想像してみてください。家を建てるときの「レンガ積み」を。一つ一つのレンガが、きれいに、隙間なく、まっすぐに積まれていれば、丈夫で美しい壁になりますよね? 曲がっていたり、隙間だらけだったりしたら…ちょっと心配になります。

    ペルシャ絨毯の裏面も、これとよく似ています。一つ一つの「ノット(結び目)」が、まるでミリ単位の小さなレンガ。 それらが、

    • どれだけ均一な大きさで並んでいるか?
    • 隙間なく、きっちりと詰まっているか?
    • 列がまっすぐ、整然と織られているか?

    ここを見ることで、その絨毯がどれだけ丁寧に、高い技術で織られたかが分かるのです。

    本当に良い絨毯は、裏面もまるで模様のように美しく、触ると滑らかで、目がしっかりと詰まっています。こんな風に、裏面まで神経を使ってきれいに織り上げられた絨毯は、やはり手間暇がかかっている証拠であり、大変貴重とされています。

     

    まとめ

    ペルシャ絨毯の「ノット数」について、少し深く掘り下げてみました。

    • ノットとは「結び目」のこと。
    • 一本一本結ぶからこそ、心地よい踏み心地と、驚きの耐久性が生まれる。
    • クム産シルクには、1cmあたり10~11ノットという品質の目安がある。
    • そして、その丁寧な仕事ぶりは、裏面に正直に表れる。

    ノット数は、確かに絨毯の品質や価値を知る上で、分かりやすく、重要な「入り口」です。数字が大きいほど、緻密で丈夫な傾向があるのも事実です。

    でも、それ以上に大切なのは、その数字の裏にある「手仕事の価値」を感じることではないでしょうか。一結び、一結びに込められた職人さんの時間と技術、そして想い…。

    ぜひ、ペルシャ絨毯を見る機会があったら、ノット数という数字だけでなく、その結び目一つ一つが持つ物語に、少しだけ思いを馳せてみてください。きっと、その絨毯がもっと愛おしく、特別な存在に感じられるはずですよ。

     

    【ペルシャ絨毯選びのご相談はこちら】

    ペルシャ絨毯専門店ゴレスタンでは、お客様のお部屋やライフスタイルに合わせた最適な絨毯をサポートいたします。豊富な品揃えの中から、専門スタッフが丁寧にご案内させていただきますので、お気軽にご相談ください。

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