ペルシャ絨毯はなぜ高いのか?

目次

    シェア

    一枚の芸術品が生まれるまで

    ペルシャ絨毯が芸術品と呼ばれる理由、その織り方の秘密と、職人たちの驚くべき手仕事の世界を、ご紹介します。これを読めば、ペルシャ絨毯を見る目が、きっと変わるはずです。

    ペルシャ絨毯の「結び方」は2種類ある

    ペルシャ絨毯の最大の特徴は、糸を一本一本「結びつけて」作ること。この結び方には、主に2つの種類があります。これが絨毯の性格を決める、最初のポイントです。

    • ペルシャ結び(シングルノット) 片方の縦糸に糸を巻き付ける方法。流れるような曲線や、緻密で繊細な模様を描くのに適しています。芸術性の高い絨毯によく見られます。
    • トルコ結び(ダブルノット) 隣り合う2本の縦糸にしっかり結びつける方法。結び目が頑丈で耐久性が高く、実用的な絨毯に多く使われます。

    どちらが良いというわけではなく、デザインや産地によって使い分けられています。

     

    一枚の絨毯ができるまで気の遠くなるような手仕事の工程

    では、実際にペルシャ絨毯はどのように織り上げられていくのでしょうか? その工程は、驚くほど地道で、根気のいる作業の連続です。

    1. デザインを決める(図案作成) まず、絨毯の設計図となる「図案」を作ります。伝統的な模様や、新しいデザインを方眼紙のようなものに描き起こします。
    2. 糸を結ぶ(ノット作成) 織り機に張られた縦糸に、図案を見ながら、指定された色の糸(パイル糸)を一本一本、手で結びつけていきます。 結んだら、余分な糸をカット。これをひたすら繰り返します。
    3. 緯糸(よこいと)で固定する 一段結び終えるごとに、緯糸を通して、櫛(くし)のような道具でトントンと下に打ち込み、結び目をしっかり固定します。これで絨毯の目が詰まり、丈夫になります。

    この「結ぶ→固定する」という作業を、何十万回、何百万回と繰り返して、ようやく一枚の絨毯が形になっていくのです。

    なぜペルシャ絨毯は高価なの?

    「手織りって、時間がかかるんだろうな」とは想像できても、具体的にどれくらい程度でしょうか。

    高密度なペルシャ絨毯の場合、熟練した職人さんでも、一日に織れるのはわずか数センチ。ノット数にして約5,000個程度が限界と言われています。

    例えば、リビングに敷くような2m×3mサイズで、1㎡あたり100万ノットの絨毯だと…

    単純計算でも完成までに3年以上かかることに!

    この「時間」こそが、ペルシャ絨毯の価値を理解する上で非常に重要です。それは単なる作業時間ではなく、職人の熟練した技術と、揺るぎない集中力、そして人生の一部が注ぎ込まれた時間なのです。

    これほど長い時間をかけて作られるため、残念ながら、全ての絨毯が完成するとは限りません。織り手の事情などで、途中で織るのをやめてしまうケースもあるのです。だからこそ、完成した一枚のペルシャ絨毯は、多くの困難を乗り越えて生まれた、奇跡のような存在とも言えるかもしれません。

    クム産シルク絨毯の「極めて困難な」織り

    ペルシャ絨毯の中でも、特にクム産のシルク絨毯は、その織りの困難さで知られています。理由は、極めて高い密度(1㎡100万ノット超も!)と、非常に多くの色数を使うからです。

    想像してみてください。1cm四方の中に100個以上の結び目があるような、ミリ単位の世界。そこに、図案通り、何十色もの中から正しい色のシルク糸を選び、寸分の狂いもなく、正しい位置に結びつけていく…。これはもう、超人的な集中力と正確性が求められる作業です。

    技術だけでは乗り越えられない、この困難な作業を支えるのは、一体何なのでしょうか? それは、ペルシャ絨毯の色柄に対する深い「愛情」、そして「最高の芸術品を自分の手で生み出したい」という職人の強い「意志」だと、私たちは考えています。クム産シルクの特別な輝きには、そんな職人の魂が込められているのです。

    素材、道具、そして「人の手」が織りなす芸術

    もちろん、良い絨毯には、良い素材(シルク、羊毛、綿など)と、適切な道具(主に手動の織り機)が不可欠です。

    しかし、最終的にペルシャ絨毯の品質を決定づけるのは、やはり「人の手」と「心」です。 正確さ、集中力、根気、そして美しいものを作り出す感性。これらが一体となって、一枚の絨毯に命が吹き込まれます。若い織り手の瑞々しい感性が光ることもあれば、ベテランの熟練の技が冴えわたることも。その作り手の個性や想いが、絨毯の「味」となるのです。

    まとめ

    ペルシャ絨毯の織り方、一枚の美しい絨毯は、決して簡単には生まれません。

    • 計算された結び方の技術
    • 一結び一結び、色と形を紡ぐ地道な作業
    • 時には数年にも及ぶ、途方もない時間
    • ミリ単位の正確さが求められる、極限の集中力
    • そして、絨毯への深い愛情と職人の魂

    これら全てが合わさって初めて、ペルシャ絨毯は単なる敷物を超えた、「芸術品」となるのです。

    次にあなたがペルシャ絨毯を見る機会があったら、ぜひその美しい模様だけでなく、一結び一結びの向こう側にある、職人たちの息遣いや、費やされた時間に思いを馳せてみてください。きっと、その絨毯が持つ本当の価値と、深い魅力に気づくはずです。

    【ペルシャ絨毯選びのご相談はこちら】

    ペルシャ絨毯専門店ゴレスタンでは、お客様のお部屋やライフスタイルに合わせた最適な絨毯をサポートいたします。豊富な品揃えの中から、専門スタッフが丁寧にご案内させていただきますので、お気軽にご相談ください。

    皆様のご来店、お問い合わせを心よりお待ちしております。

    戻る

    シェア